お返しします

 

距離感の記事で、好感を持つことの話を広げようかと考えていた。

 

好感を持つと許せる範囲が広がる。

例えばよく知らない人が相手だと「こんなことでミスするなんて…!」と腹立たしく思うことも、好感を持つ人がミスした場合は「しょうがない、なんとかなるよ!」と思えることがある。

知らない人よりも知ってる人、好きじゃない人よりも好きな人のほうが、「大切にしてあげよう」という気持ちになりやすい。

 

距離感の記事の彼女も、知らない人から知ってる人になった私に対して笑顔のプレゼントをくれた。

私との関係性を大切にしたいという気持ちを受け取った。

 

 

この気持ちを利用するのがモラハラ

「好きならこれくらい許せ」

「俺はお前のためにこんなに我慢してるし許してるし尽くしてるのにお前は俺のために何もしないのか」

相手の優しさを利用して罪悪感を煽る悪質な手口だった。

 

そもそも何をどこまで許すのか、我慢するのか、尽くすのかはその人自身が決めることであって、何をどれだけしてもらったからこれだけ返さなければいけない、というものではない。

 

夫は普段の仕事でも

「俺は普段他のヤツらより頑張ってるから多少のことは許される」

「これだけしてやってるから文句は言わせない」

と言っていた。

 

そう思う気持ちはわかるけど、その考え方だといつか苦しくなる時が確実に来る。

私自身も、どうしてこんなに頑張っている私ばかりが報われないんだろうと悩んだ時期があった。

夫に伝えようと試みたが、案の定わかってはもらえなかった。

 

そうして自分はしょっちゅう遅刻や当日欠勤を繰り返し、それでも許される自分は特別だと自慢していた。

そのくせ他の社員が休むと

「他の社員に迷惑がかかることがわかってないあいつはクソだ」

「ろくに仕事もできないくせに休みやがって」

と繰り返し暴言を吐く。

そんなに困るなら本人に伝えたり上司に訴えればいいのに、職場では決して言わずに無関係の私にだけぶちまけていた。

 

初めの頃はそうだよね、困るよねと聞いていた私もいよいよ呆れ果て、その言葉全てブーメランですが、と心の中で思いながらフーンと聞き流すようになった。

 

 

こんな感じでふとしたきっかけで夫のことを思い出してしまう。

そして死ねと言われてひどく傷ついたことを思い出し、むしろ夫が死ねばいいのにと思ってしまう。

 

先ほどふと思い出したことは、いらないものは受け取らなければいいという話。

仏教の教えだったと思う。

仏陀がめちゃくちゃ暴言を吐かれたが全スルーしたというような話だった。

仏陀がその人に「たとえばあなたがプレゼントを差し出して私が受け取らなかったら、そのプレゼントは誰のものになる?」と聞くとその人は「自分のものになる」と答えたそうだ。

そりゃそうだ。

いらないと言われたら「そっか」と戻すしかないし、無理やり押しつけようにも受け取ってもらえないのだから自分で持っているしかない。

仏陀曰く、暴言も同じとのこと。

 

そうか、素直に受け取る必要なかったんだ、と腑に落ちた。

とはいえうっかり素直に受け取ってしまった上に今日まで無駄に大事に保管してきてしまったので、かなり新鮮な状態を保ったまま私の心の中にある。

いらないと思ったら速攻で返したいと思うのだが、実際に会うわけにもいかない。

そこで夫の姿を想像し、にっこり笑って言ってみた。

 

「ごめーん、うっかり素直に受け取っちゃったけど、いらないし必要ないから返すね! 死ね♡」

 

ちょっとスッキリした。